なぜ音楽は美しいのか(リバーブはなぜ快感なのか)
原題:GAIA: A new look at life on Earth
著者:J. Lovelock(ジム・ラブロック) 星川 淳 (翻訳),
工作舎
1984年
原書は1979年に出版された。著者は、「地球の大気組成は非平衡状態にあり、地球はその非平衡状態を自動調節する機能(サイバネテックス)を持っている有機体である」というガイア仮説を打ち立てた。まるで何かの意思であるかのようにサイバネテックスが発揮されることから、その意思を持つ概念を「ガイア」と名づけている。
リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」と並べられ、攻殻機動隊の中で紹介されていた。「利己的な遺伝子」が人間の意思は結局遺伝子によって無意識のうちに生み出されていると説いたのに対して、本書はこの「ガイア」という概念の中に、人間の意志さえも(ある程度は)織り込まれていると説く。その超ミクロな遺伝子と超マクロなガイアとの対比が興味深い。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」は殺虫剤や農薬などの化学薬品のせいで、公害が引き起こされ、このままだと「沈黙の春」を迎える日が現実のものとなりそうだと警告を与えているが、本書はもう少し楽観的だ。平たく言ってしまえば、たとえオゾン層が破壊されたとしても、「ガイア」がその破壊を補うよう大気のバランスを取ってくれる、というもの。ちょっとやそっとじゃ崩れないようになっているという。
地球の大気はまさに奇跡的なバランスで成り立っている。たとえば、酸素の割合が少しでも高くなると大惨事になるのは容易に想像できるだろう。多過ぎもせず少な過ぎもせず、絶妙なバランスを保っていられるのは、この自動調節のメカニズムがあるからこそだ。そして、そのメカニズムの大部分は微生物が担っていて、彼らが大気中に気体を放出したり、あるいは大気中から気体を取り入れることによって調整される。
この「人間は自然の一部で生かされている」的な話はひどく当たり前のことのように思える。でもこうした宗教がかった抽象論を科学によって論理的に証明していくという行為に本書の意味があるのではないかなと思いました。
特に興味深いのはエピローグ。ここでは人間の意志、とりわけ人間の持つ美に対する感性と「ガイア」の関係性について触れられている。引用すると、
私たちの本能のうち、生存を促すもうひとつの可能性として考えられるのは、個人個人の美しさにおける適合性と均整(フィットネス)にともなうものである。われわれの肉体は細胞の共同体によってなりたっている。細胞核をもったそれぞれの体細胞は、共生(シンビオシス)の度合の低い生命体の結合にほかならない。もし、こうしたすべての共同作業の産物である人間が、正しく巧妙に組み立てられたとき美しく見えるものだとすれば、私たちがその同じ本能でもって、人間を含むさまざまな生き物や、他の生命形態の集合でできたひとつの環境の美と適合性をも認識できると考えるのはゆきすぎだろうか。(p.257)
この辺を読んだときにぼくが思ったのが、この記事のタイトルにある「音楽はなぜ美しいのか」という人生における大きな謎を紐解くヒントになるのではないかということ。適合性と均整(フィットネス)、あるいは共同作業といったキーワードはそのまま音楽にも当てはめることができる。ハーモニーやリズム、アンサンブルはまさに適合性・均整・共同作業そのものだ。
だが、上記のロジックではもう一つの大きな疑問を解決できない。「リヴァーブはなぜ気持ちいいのか」(個人的にはこれも人生における大きな謎の一つ)。リヴァーブはすべての楽器において必要不可欠な重要な要素だ。デジタルでかけなくても楽器それ自体、あるいは演奏する場所自体に「響き」は必ず含まれてしまう。この謎を解くカギも、本書にあるような気がしてならない。
われわれの本能のなかにはまた、周囲のほかの生命形態との関係において、最善の役割を認知するというプログラムも組みこまれているかもしれな い。ガイアの中のほかのパートナーたちと関わるにあたって、この本能にしたがった行動をとれば、正当と思われるものは同時に見た目もよく、われわれの美的感覚のもととなるさまざまな快感をひきおこすものだという発見によって報われるだろう。(中略)われわれ自身と他の生命形態とのあいだにバランスの取れた 関係を達成することを促すのが、快感という報酬であったとしても、ダーウィン的な進化の淘汰として矛盾は無かろう。(p.256)
つまり、人間が他の生命形態との関係から、自らの役割と相手の役割を認知できるとき、美を認識できるということではないだろうか。本書でも触れられているが「生命」とはエントロピーの減少と同義である。音のリヴァーブの減衰効果と、エントロピーの減少は不思議な共通項があるように思えてならない。つまり、音が響いたのちに減衰する現象は、音楽を生命として認識することに対して象徴的なイメージを抱かせる。人間は無意識のうちに音楽と人間の関係性を、リヴァーブによって結び付け快感を覚えるのではないか…。っていうのは無理があるかなさすがにww
エントロピーとかいまいちよく分からないので、どなたか指南書を紹介していただけると幸いです。
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コメント
ちなみに僕らの世代の神話の一つ、FFシリーズも特に7において坂口博信氏のガイア理論的世界観を強く反映していると言われているよ。いかんせんクラウドっていったい何なのかも含めて、あのストーリー全体が個人的には今でもよく分かっていない部分あるんだけどさ。ジェノバって何!
なんかペーパーの時期になるとよく昔やったゲームについて検索してて、確実に無駄な知識が深まりますw。
投稿: qinmu | 2008年12月25日 (木) 01時18分
そうだね。わかったようでわかっていない笑。ジェノバって確か、、セフィロスのコピー?だっけ。でもなんだか腑に落ちないね。気付いたら戦ってるし笑
クラウドは個人的にはすごく好きなヒーローの一人だよ!ガンダムのアムロとかカミーユによく似たフィーリングがあってね。あのだめだめっぷりが思春期のぼくの心にしみじみ響いたなあ。
昔よくやったゲームについて検索してamazonとかのレビューとか読むの結構楽しいよね笑。アランドラとかさ。
投稿: ここいば | 2008年12月29日 (月) 11時52分