彼を妻だと思っている
愛媛県警の捜査費不正支出問題を内部告発した県警巡査部長の仙波敏郎さん(59)を、先頭に立って支援してきた「仙波敏郎さんを支える会」の世話人で、元ジャーナリストの東玲治さん(59)が23日、同県東温市田窪の自宅で亡くなっているのを訪れた知人が見つけた。死因は狭心症による発作とみられる。
東さんは昭和23年11月、松山市生まれ。松山商科大学(現・松山大学)を卒業後、46年、産経新聞社に入社。松山支局など17年間、取材記者として過ごした。
「気骨のある記者」として知られ、退社後に編集・発行していた「政経ジャーナル」で、県内のJAで次々に発覚した光センサー選果機の不正入札事件をスクープ。著書に「記者物語」「続記者物語」「-告発警官1000日の記録-ドキュメント仙波敏郎」(いずれも創風社出版)などがある。
仙波さんは「親身になって世話をしていただいた。残念だ」と言葉を詰まらせた。葬儀告別式は25日午後1時から松山市築山町5ー16の小倉聖苑築山ホール。喪主は兄の隼也(しゅんや)さん。
仙波さんからのメールは突然だったが、ぼくが気付いたのは受信後数日経ってからだった。東さんとは仙波さんの講演会でお会いしたが、直接言葉を交わすことは無かった。
食品製造会社の不正が内部から頻繁に告発されたのは、福田元首相の消費者行政推進による圧力と、それをマスコミが欠かさずに取り上げることで、一種の流行が形成されたからだ。告発した内部の人間が匿名であっても、調査の手が食品製造会社に及んだのもそのせいだろう。逆に、顔を出して実名での内部告発というのは非常にリスクの高いもので、一人では難しい。警察内部の裏金問題という、マスコミの弱い領域での内部告発となればなおさらだ。以前の記事でも触れたが、事実、告発後の警察側による配置転換を始めとする仙波さんへの報復は相当なものだった。
東さんの本「ドキュメント・仙波敏郎 -告発警官1000日の記録-」では、仙波さんを応援し続けた東さんの熱い思いが綴られている。「気骨ある記者」と上にあるが、いわゆる昔ながらの社会部記者といった感じで、尊敬できる志が伝わってきた。警察の裏金問題をしっかり報道しない既存のマスメディアに対しての、かつて自分が所属していたいわゆる「報道機関」に対しての批判が、最近の記者の「志」が低くなっているという事実を象徴しているように思えた。これから記者になる自分へ、気概を失ってはいけないんだと、東さんは教えてくれた。
そして、仙波さんの後援会後の飲み会ででた仙波さんのせりふが、今回の記事のタイトル。「わたしは彼を妻だと思っている」。息子の不祥事、さらに本当の奥さんにも先立たれるという、とてもパーソナルな部分でも悩みもがき続けなければならなかった仙波さんを、東さんはまさに内側から支えていたのだろう。東さんと仙波さんの信頼関係が、とてもよく伝わってくる言葉だったと、今振り返ってみて思う。ご冥福をお祈りいたします。
9月30日、警察による報復措置(配置転換)が不当であるとして仙波さんが起こした国家賠償請求訴訟の控訴審判決で、高松高裁は一審判決を不服とした県の訴えを退けた。大方の予想通り、仙波さんの勝訴となった。仙波さんの勝利を見届けた後、東さんは旅立った。報道によれば、判決後の記者会見で「これまでは準備期間。今日が裏金をなくす第一歩」と語ったという。仙波さんからの訃報では、仙波さんが少し弱気で心配だが、仙波さんを応援する人は今ではとても多い。ぼくもその一人で、東さんと仙波さんが積み上げてきた正義を、決して忘れることなく見習って、胸に留めていきたいと思っています。入局後直接的にこの問題に対して、自分がどこまでできるかわからないけれど、応援しています!仙波さん、がんばってください!
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